House in Nishimukou
桜とともにある家
京都は向日市に建つ木造二階建ての住居である。街路樹として敷地の
道路境界端部にある大きな桜の木がこの建築のあり方を決定した。
すぐ近くにある私鉄駅への往来からの視線を気にせずに、この桜を気
持ちよく眺めることのできる空間を創り出すことがこのプロジェクト
のテーマであった。敷地は道路から１ｍほどのレベル差で高い状態で
あったため、このレベル差を利用して、外部との視線の交錯を避けつ
つ桜への借景を実現することが可能となった。玄関から続くリニアな
ホールを抜けてリビングスペースに入ると南からの光をたっぷりと取
り込むヴォイド空間に包まれる。ここから桜の方向へ４５０ｍｍのレ
ベルを持ち上部にもう一つの吹き抜け空間を持つくつろぎの間が流動
的に連続している。スキップフロアに誘われる様に視線は外部の桜の
樹へと導かれる。くつろぎの間には２階にある二つの外部空間のうち
の一つであるテラス３から光が流れ込み、ヴォールト天井をなめる様
に光が降りてくる。またこの吹抜には上階の個室１が面しており、手
前の空間の天井から連続して檜で仕上げられたその壁面には日本の伝
統的な建具形式の一つである無双窓が設けられている。これを開閉す
ることでくつろぎの間と個室１の空気や視線の相互のつながりをフレ
キシブルに生み出すことを可能にしている。またキッチンや食事の間
に連続して畳の間が用意されており、そこから南に面して縁側的なテ
ラス２が、プライベートな小さな庭を囲んでいる。大きなワンルーム
空間として畳の間からくつろぎの間へとつながる構成をとりながら、
床レベル差や吹抜け、いくつかのテラスからの光、外部の桜といった
有形無形のものとの関係を創り出し、暮らしの様々なシーンが持つ雰
囲気や楽しさを最も増幅するように関係付けることが、この住まいに
おいて目指されたことである。
■計画地 ：京都府向日市
■構造・規模：木造 F2
■建築面積 ： ７６．３４㎡
■延床面積 ：１１１．４７㎡
□設計期間 ：H.１７．０８ ～ H.１８．０１
□工事期間 ：H.１８．０５ ～ H.１８．１１
ＷＯＲＫＳ